雪の光
運命なんて、考えたことがなかった。
全て必然だと思っていた私にはその考えは新しい。
「じゃあな」
「うん」
彗と別れてからの最後の直線の道が憂鬱だ。
またお母さんは何かするに違いない。
早くこの家を出たい。
「ただいま」
「いい加減にしてよ!
あたしがどれだけ大変な思いをしていると思ってるのよ!」
「俺はお前に生活に必要な金は渡してるだろ!
働いているのは俺だ、文句は言うな!」
……また喧嘩か。
お父さんが単身赴任から帰ってくる度に喧嘩をしている。
顔を合わせると挨拶のように暴言を吐き合う。
小さい頃から見てきた光景だから、今さら何を思う訳でもない。
アンタナンカイナケレバヨカッタ
コッチニハモウカネガナイ
コドモナンカウンダノガマチガイダッタ
カッテニウンダンダロ
帰ってきたことに気付かないくらいに喧嘩をするなんて、大人気ない。