モモちゃんに溺れる
「私ね、不倫してたの。」

最初の一言は、俺の予想よりも重かった。

「同じ病棟の、先生と。」

「そうなんだ・・・。」

「2年くらいかな。

3年前にうちの病院きて、よく相談とかのってくれる優しい人で、二人で飲みに行ったりしてるうちに、まあ自然と流れでそういう関係になって。
セックスしてから、向こうが既婚者だって知った。」

言葉は淡々としてるけど、モモちゃんの目からは今にも涙がこぼれそうだった。

「最初は、やばいって思ってやめようと思ったんだけど、やめられなくて。
どんどん好きになっちゃって。

遊ばれてるってわかってても、無理で。大好きで。」

涙を一つ流して「バカだよね。」と俺に微笑みかける。

その問に、ただ首を振るしかできない。

「ずるずる二年も関係続けて、昨日言われた。
『子供ができた。』って。もちろん奥さんの方ね。
私との時は彼、徹底してたから。きっと、足つかないように。

その言葉聞いて、彼はなにも言わなかったけど、ついに終わりかって思って。

いつもは飲みに行ってそのまま泊りなのに、昨日は泊りはなかったし、彼、別れ際に『また。』って言わなかった。
だから、もう終わりなんだと思う。」

泣き続ける彼女。

予想していた通りは通りだったけど

モモちゃんが、どれだけその先生のことを好きだったか
いや、きっと今でも好きか、伝わってきて切なくなる。


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