モモちゃんに溺れる
「はじめましてって・・・なんなんですかあなた!」

藤井さんの怒った声、表情なんて初めてみた。

いつも猫なで声でへらへらしてる彼女しか知らなかったから。

「あ、ごめんね!ちがうの!」

モモちゃんは慌てて俺から離れる。

「私は、ただのお隣さん。」

ただのって。昨日だって今朝だってあんなことしたのに。

「彼女さんが心配するような関係じゃないから。」

「は!?モモちゃん何言ってるの。この人は彼女じゃないから。

俺に彼女なんていないから。」

モモちゃんの言葉に、頭で考えるより先に否定していた。

「そうなの?」

「そうだよ。帰ろう、モモちゃん。じゃ、藤井さん気を付けて。」

「あ、ちょっと!!」

呼び止めようとする声は聞こえないふりして、モモちゃんの手をとって俺はホームへの階段を上った。



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