モモちゃんに溺れる
モモちゃんはとくに何も言わずに、手も振り払わずについてくる。

ホームについてから少し俺の様子をうかがうようなそぶり。

「大丈夫だから。

さっきの子は、ただのバイト先の後輩。」

「そう。でも置いてきちゃってよかったの?」

「うん。ホーム逆だし。いつも帰り一緒になっても駅で別れるから。」

そう告げるとモモちゃんは納得したように前を向いた。

「モモちゃんは、どっか行ってたの?」

「今日はおやすみだったから、久しぶりに家族とディナーだったの。」

嬉しそうに笑いかけてくる。

「帰りにソウに会えるなんて思わなかったから、うれしいな~。」

「俺も。あえて、すごいうれしい・・・。」

会いたかった。

今朝ぶりなのに、相変わらず彼女は綺麗で、可愛くて。

会いたくてたまらなかった。

外じゃなかったら抱きしめるのに。

我慢してただぎゅっと繋いでいる手に力をこめる。

そんな俺を見上げてまた笑う。

こうして、手を繋いで電車を待っていると俺たちまるで恋人同士みたいだ。

そう、なれたらいいのに・・・。


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