モモちゃんに溺れる
「わかってるならちゃんとして。

瑠依に知られる前に蓮との関係を切って。」

「・・・・それ、は。」

詰め寄るユキに、モモちゃんはなにも言わない。

言わないことに、安堵してしまう。

それで「わかった。」って言われることが怖かった。

もう会えなくなるのがなによりも嫌だった。

「お姉ちゃん!!」

はっきりしない姉に妹は怒る。

当たり前だ。

きっと、モモちゃんと思ってのことだ。

「瑠依は、お姉ちゃんのこと信じてる。

これを知ったらきっと・・・。」

「わかってるよ。わかってるの、ゆきちゃん。」

「モモちゃん・・・。」

ユキは、やがて詰め寄るのをやめた。

そして俯く。

彼女の表情は見えない。

「お姉ちゃん、ずるいよ。」

え?

ユキの言葉は小さすぎて聞こえなかった。

なにより、ずっと威勢のよかったユキが急にしおらしくなったのが気になった。

「ゆきちゃん?」

モモちゃんもうかがうようにユキに手をのばす。

「もういい。」

それを制すように、バッと顔をあげる。

ユキはたちまち荷物をまとめて立ち上がった。

言ってもカーデとカバンとスマホだけだ。

「待って!」

玄関へ向かうユキを追いかける。

俺も反射的に二人の後を追った。

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