セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「あ、奏音、待ってる間に、婚姻届サインして」
翼は、お店のソファーに腰掛けながら、封筒から婚姻届を私に差し出した。
え?
ここで?
こんな所で書かないって言えないよ。
店員さんいるし。
「……あ、うん」
私は、なかなか手が出なく渋っていると翼が、「緊張するよな。俺もドキドキした」と言ってきた。
「大丈夫。ゆっくり書け。市役所よりはここは静かだから、落ち着いて書けるだろ」
私は半信半疑で、[妻になる人]の欄を順々に埋めて行った。
「よし、記入漏れはないな」
翼は端から端まで確認しそう言った。
「じゃあ、行こうか」
翼は爽快にカッコよく立ち上がった。
里穂が翼からの連絡をやきもきしながら待っていることなど誰も知らなかった。