セレブ結婚の甘い落とし穴【完】

「つ、翼、里穂だよ」
私は何かに怯えるように答えた。


「開けてやれ」


「うん、わかった」


エレベーターはみるみるうちに上昇しており、再び、ピンポーンと部屋中に鳴り響いた。


翼が扉へ近づいていく。
私は思わず、ソファーの陰に隠れた。


翼が扉を開けると、甲高い悲鳴が飛び込んできた。

「ちょっと翼、どういうこと？連絡くれるはずだったでしょ？」


「れ、連絡？」
私はソファーの角に勢いよく頭をぶつけた。


「誰？誰かいるの？」

私はどうすることも出来ず、その場から、立ち上がった。

「奏音？何で？ん？何この荷物…」


「見てのとおりだ。俺達は今日入籍して、奏音は引っ越してきた…」


「どういうこと？翼、私を騙したのね…」

里穂は翼の頬を強く引っぱたき、泣きながら帰って行った。


私はただ唖然とした。


何が起こったの？
里穂は何を怒ってるの？
何故ビンタしたの？