セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「……書けない。書けません」

私は震える声で里穂に呟いた。


里穂は、生々しい薄汚い声で言った。
「これは、あんたの義務よ。翼はあんたと別れたいのよ。翼、もう来るから」


「つ、翼来るの?」
それなら、その方が良い。ちゃんと話を聞かないと私は納得出来ない。


「もう奏音に勝ち目はないわ」
里穂は高らかに店内に響き渡る笑い声を上げた。





「あ、来たわよ」


「翼…」


「待たせたな」
翼はそう言いながら、私ではなく、里穂の隣りに座った。

まず、それが私は衝撃的だった。


「話はもう里穂から、聞いたんだな」
翼は、表情ひとつ変えることなく私に言った。


「翼、どういうこと?私達は上手くいってたよね?」
私は恐怖に怯えながら、聞いた。


「上手くいってたのかな。どうだろ?俺は、やっぱり里穂が好きだから、別れてくれ。里穂と一からやり直したいんだ」



「ほ、本気で言ってるの?」




「奏音、お前にはもう飽きたんだ」





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