セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「わぁーすごい!」
吹き抜けのエントランスに真っ白な床と壁、赤い絨毯、天井には、豪華なシャンデリア。
「えぇっ、ここ玄関だよね?」
「ここは、裏口ね。玄関はあっち」
翼は、見たこともないような大きな窓のある方を指さした。
げ、玄関だけで何畳あるのやら?
私は、驚きと躊躇いを隠せず、深呼吸をした。
部屋の中は至ってシンプルだが、広さははかりしれない。
料理をしたくなるような豪華なキッチン。
ずっと寝ていたいようなリビングにある華麗なるソファー。
そして……
「奏音、こっちおいで」
私は、テンションマックスで、駆け寄って行った。
「わぁー綺麗すぎる!」
ベランダからの辺り一面の海景色は最高に素晴らしかった。うっとりしてしまい声も出ない。
「どう?俺と付き合うといい事あったでしょ?」
翼は、色っぽく黒眼鏡を外しながら言った。
「え?ここは?」
私は目をパチクリしながら、聞いた。
「俺の別荘だよ」
翼は、清潔感溢れるカッコイイ笑顔でビシッと答えた。
「す、すごい!」
単純過ぎる私。
でも、すごい彼氏出来ちゃった!
やばい。
脳内パンク中の私に、翼が言ってきた。
「奏音、幸せになろうね」
へ?
何?
いきなりどういう意味?
「紅茶入れようか?」
再び眼鏡をかけた翼は柔らかく私に言ってきた。
「あ、私やります」
「じゃあ、一緒にやろう。玲於達はコーヒーだからな」
翼のスラリとした綺麗な指に、思わず見とれてしまった。