セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「ちょっと待て。落ち着こう。整理してみよう」
そんな玲於が一番動揺している。


それまで奏音の事を頼む……あの言葉。
翼、初めから離婚する気はなかったってことか?
もしかしてこれも演技だったのか?
でも、なんの為に?


「里穂に電話してみる」

「消息不明だよ。きっと出ないよ」


ブルブル

ブルブル

ブルブル

ブル……


「はい」

「里穂か、今どこにいる?」

「助けて。玲於、助けて。家から出られない」
里穂の声は激しく震えていたようだ。


「今も外は報道陣だらけか?」


「うん」


「確認だが、[離婚届][婚姻届]は出してないのか?」


「翼が持ってるから。出してない」


「そうか…里穂はしばらくそこにいろ」


私には、玲於の顔色が変わったのが一目瞭然だった。
何かわかったんだ、私はそう確信した。


「里穂、なんだって?」


「翼、最初から、奏音と離婚する気もなかったし、里穂と入籍する気もなかったんだよ。里穂はまた翼に騙されたんだ」

玲於はぐったりと肩を落とした。


「え?何で?翼は演技してたの?」


「そういう事だ」


え?
翼は私に飽きたんじゃないの?
私と離婚したかったんじゃないの?
全て演技?



まさか里穂を………






「玲於、今すぐ里穂を助けに行かなきゃ」


「助けるってどうするんだ?」


「私がおとりになる。報道陣を巻く」


里穂、今行くからね。
大人しく待っていてね。




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