セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
桜の花びらが綺麗に散り始めて来たなと思いながら、仕事を終え、外に出ると、すでに真っ白なベンツが輝きを放ち、私を待っていた。
私は本当に来たんだと思わず、呆然と立ち尽くす。
「奏音、お疲れ」
翼は私をねぎらうかのように温かくそう言った。
「お疲れ様です。わざわざありがとう」
翼が助手席の扉に手をかけ、どうぞと言わんばかりに私を案内した。
紳士だなぁ。
やっぱ庶民の私とは違う。
私は、ピカピカのベンツに乗り込んだ。
「さて、ちょっと買い物して行こうか?」
翼は、優しい笑みを浮かべながらそう言った。
「買い物?」
「うん、奏音の買い物」
「へ?」
私は意味がわからない。
「服に靴に、ネックレスだろ。あと……」
翼は、かなり真剣な表情。
「……はい?」
さらに意味がわからなくなる。
翼は、勢いよくハンドルを回し、豪快に運転して行く。
「よし、着いた」
翼は、車を降りるとまた助手席の扉を開けてくれた。
「ここ?Caroline?めちゃめちゃ高いブランドだよ」
私は、びっくりして車から降りれなかった。
「ほら、大丈夫。ゆっくり降りて」
翼は優しく手を差し伸べた。