セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「り、里穂の事、もっと大事にして。わ、私は翼がいるし」
とりあえず翼を引き合いに出して、里穂を思い出させた。
「ん?里穂、大事にしてるよ。ものすげぇー好きだし」
玲於は淡々と話す。
「じゃぁー私のとこには来ないで」
だんだんと怒りがこみ上げてくる。
「なんで?俺、奏音ちゃんもすげぇー好きだし」
「は?違うよ。からかわないで。里穂は私の親友なんだよ。傷つけないで」
「んーじゃあ、翼と別れてくれる?」
玲於のあまりにも身勝手な発言に私はすっかり呆れた。
「翼のことは、私大好きだから。別れない」
思ってもいないことを口にした。
翼は決して嫌いではないが、まだまだ大好きには程遠い。
「なら、俺が奏音ちゃんを落とす」
玲於は、私の下顎をグイッと引き上げた。
「や、やめて……」
私は焦って部屋の隅へ駆け寄った。
「ねぇー壁ドンってこうやるんかな?」
玲於がそう言いながら私に回り込んで来た。
「わ、わかったから、落ち着こう」
私は両手で、玲於を払い除け冷静を装った。