セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
私は、少し肌寒さを感じながらも、息を切らしていた。
街灯はほんのわずかしかないため、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。
「奏音、先に帰らせてごめんな。大丈夫か?」
「大丈夫。でもなんか……会いたかった……」
よく分からないが素直な気持ちだった。
「奏音、おいで」
翼がグイッと私の両肩に手を乗せ、私を自分の胸元に引き寄せた。
「暖かいか?」
「うん…」
「奏音、お前は、今日から俺の婚約者だからな。パーティーでそうみんなに紹介したのは本当だからだ」
熱い口調で語る翼。
え?
なんで?
いきなり彼女で、
いきなり婚約者?
私はかなり戸惑ったが、玲於の記憶を消したくて、黙ってそのまま聞いていた。
「奏音、俺は一目惚れしたんだ」
えぇー?
そうだったの?
そういう流れ?
うそ?
信じられない!
「そうだったんだ…ありがとう…」
私は心の動揺を隠しながら必死で答えた。