セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
日曜日の11時に、翼は私を家まで迎えに来た。晴れ晴れしい日なのに、私は玲於に見つからないようにそっと家を出た。
「奏音、おはよう」
「翼、おはよう。今日はよろしくお願いします」
私はやはり、周囲を気にしながら勢いよく、車に乗り込んだ。
「前も言ったけど、今日は俺の実家に行くから」
「うん。わかった」
私は緊張を隠せない。
「大丈夫だから、落ち着け」
翼は私の表情をよく見ていて、いつも優しい言葉をかけてくれる。
「聞かれたことには素直に答えればよいから」
「あ、うん……」
私はだんだん無口になって行く。
しかし、翼の相変わらずのハンドルさばきに惚れ惚れし、緊張も徐々に和らいだ。
「もう着くよ」
私はその言葉の重みに再び逃げ出したくなった。