セレブ結婚の甘い落とし穴【完】

そこは、さらに煌びやかな見事な応接室だった。

思わず目を押さえてしまうほど眩しいシャンデリアがかなり印象的だった。


「父さん、皆川奏音さんです」

今度は、翼から私を紹介してくれた。


「やあ、よく来てくれたね。よろしく」
そう言いながら、翼の父親は私に手を差し出した。


とても厳格そうな男気がある頼りになるお父様に見えた。翼はお父様にどことなく雰囲気が似ていた。

「皆川奏音です。よろしくお願いします」
私は、両手で父親からの手を受け止めた。


「さあ、ゆっくりして。座って」


「はい、ありがとうございます」
私は座るのがもったいないくらいの高価なソファーに腰かけた。



翼の両親、翼、私、4人が揃った。


私の鼓動は激しく高まる。全身熱くなる。


「翼とは、どこで知り合ったのかな?」
1番最初の質問だった。


「友達の紹介だよ」
翼が答えてくれた。


「お付き合いは長いのか?」


「1年くらい」
翼は、明らかな嘘をついた。


「奏音さん、お仕事は?」


「ネイリストだよ」
翼がどんどん答えていく。


私は黙ってニコニコ笑顔を作るのみ。



「そうか、奏音さん、結婚したら、仕事はやめてくれるかな?」


え?
考えてもいなかった…
続けたいかな。
いや、続けたい。



「やめるよ」
またもや翼が答えた。


えぇ?
そんな話はまだしてないよ。
決めちゃわないで。


「うーん、奏音さんは、翼のどこが好きなのかな?」
核心を突いてきた。


「はい、尊敬できて信頼でき、私を守ってくれるところです」
私はありのままを答えた。


「翼は、奏音さんのどこが?」


「はい、家庭的で女性らしく気配りのできるとこです」


え?
そんなふうに思ってたの?
ただ言ってるだけ?


「わかった。2人仲良くやってくれ。翼が選んだ人なら反対はしない」
納得した素振りを見せる翼の父親。


「ありがとう。父さん」


「ありがとうございます」
私は慌てて深く頭を下げた。


私は思っていたより、深い質問はなく安心したが、結局翼がほとんど質問に答えたことに不安感は生まれた。


こんなんでいいのかな?
ちょっと心配…



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