セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「国木田さんは、お仕事は何されてるんですか?」
里穂は、興味津々で可愛らしく聞いた。
「里穂さんもモデルですよね。やっぱり綺麗ですね。奏音さんは何されてるんですか?」
私は綺麗じゃないですよーだ。
失礼だなぁ……
国木田さんは、何故か里穂の質問を遮り、私に問いかけた。
「わ、私はネイリストしてます」
なんか私だけ凡人……
やだ、逃げ出したい。
「素敵ですね。ネイル、俺も玲於みたいにしてみようかな?」
私と里穂を交互に見つめる。
「奏音、やってあげなよ。私もいつも奏音にやってもらってるんですよ」
そう言うと、里穂は、彼氏と国木田さんにネイルを見せびらかした。
春らしい淡いピンクに桜の花が描いてある。
「里穂、また新しくなったんだ」
里穂の彼氏が微笑ましい笑顔で答えた。
「国木田さ…」
里穂が言いかけると、
「翼でいいです。翼って呼んで下さい」
私と里穂は、思わず顔を見合わせた。
いきなり?
里穂はすぐにその要求を聞き入れた。
「翼?翼は、お仕事は?」
恥ずかしそうに里穂がまた聞いた。
「俺?俺はまだ内緒」
翼は、まるで何か企んでいるかのようにニンマリ答えた。