セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
里穂は私がそう言うと鞄を強く握りしめた。


「なんで?」


「え?どこの病院行ったのかなって」


「駅前の[高井レディースクリニック]だよ」
里穂の声がやや震える。


「じゃあ、母子手帳は?見せてよ」


「ああ、家にあるよ」


「そんな大事なもの、今持ってないの?」
私はどんどん里穂に詰め寄った。



やっぱりちょっとおかしい。
明らかに里穂は動揺している。
それに、1人で産む覚悟のある人間が、母子手帳を持参してないはずはない。



「里穂?」


「奏音、やっぱりわかってない。私の不安な気持ち、全然わかってない」



「里穂、何か隠してることない?辛いなら話して」


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