月は紅、空は紫
 清空は、その陰陽師の血脈である。
 先祖は陰陽博士、陰陽道の主担当者であった。
 陰陽道の修習生である陰陽生を指導する立場として、正七位下を冠される高官である。

 本来、陰陽道とは古代中国で生まれた自然哲学思想である。
 それが日本で独自の発展を遂げ自然科学と呪術を体系化したものに変化した。

 世の中の全ては、陰と陽のものからなるという陰陽思想と、万物は木、火、土、金、水の五行からなるとする五行思想を組み合わせたものが陰陽五行説。
 それに日本にこれまた形を微妙に違えつつ伝わってきた仏教、密教、それに日本で古来より発展してきた神道が影響を与えて陰陽道は日本の中で発展を遂げていく。

 その権力は大きく、他の技官が低い位になるべく設定されていた平安の身分制度である律令制の中で陰陽寮の技官の位は比較的高く設定されていた。
 中でも陰陽頭の地位ともなれば、昇殿して天皇に様々な事を報告する奏上という行為が許される、いわゆる天上人の立場が許されていたぐらいである。

 しかし、武家社会の台頭、とりわけ豊臣秀吉による弾圧を受け、陰陽師は権勢を失っていくこととなる。
 この頃には、陰陽道はカルト的な存在として一部の民衆からの支持を得るに止まる事となっており、時代の表舞台からその姿を徐々に隠していくことになったのである。
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