月は紅、空は紫
 清空の一族は、世襲により陰陽師の中でも比較的高い地位に存在していたのだが――それには理由があった。
 それが歳平の一族に伝わる霊能力である。

 霊能力を携えた有名な陰陽師といえば、安倍晴明である。
 当時最先端の呪術、科学であった『天文道』や占いなどの陰陽道の技術に関して卓越した知識を持ったエキスパートであり、平安貴族たちの信頼を受けた大陰陽師で、その事跡は神秘化されて数多くの伝説的逸話を生んでいった。
 中でも平安京の魑魅魍魎を退治して回ったとされる逸話も多く、まさに呪術的な意味における陰陽道の象徴とも呼べる人物である。

 歳平の一族は、その晴明を助けての魍魎退治の任を影で請け負っていたのだ。
 京の都に強力に施された結界、その中で起きる『この世ならぬ者たち』との様々な問題を解決してきたのである。

 武士の社会が出来ると同時に、公的な権力を失った陰陽師ではあるが、それでも歳平の一族の――裏から京の都を守るという任は続いていたのである。

 清空は、この時代にその任を引き継いだ者であった。
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