月は紅、空は紫
 そういえば――と、ようやく気が付くことがあった。
 清空は、激突の瞬間に確かに転ばされた。
 鎌鼬の攻撃とは、『転ばして』『斬る』という連続攻撃のはずである。

 しかし、清空の身体には、初撃によって受けた手の傷の他に新たな傷が無かったのである――。

(なぜ……?)

 清空を転ばした鎌鼬は、まだ次の行動を起こしていない。
 その鎌鼬の奥、清空と対峙していた鎌鼬が――清空と同様に転ばされたいた。

(どういう事だ?)

「ギ……!!」

 清空に遅れること数秒、ようやく清空と対峙していた鎌鼬が立ち上がった。
 それに合わせるように、清空も完全に立ち上がり再び構えてみせる。
 二対一、状況は先ほどよりも悪くなっている。
 戦いの上で不利なことは言うまでもない、それ以上に――隙を衝いて逃げることさえ不可能な状況となってしまった。

 刀さえなく、勝ち目さえ薄い、まさに絶望に近い状態を悟り、清空は固唾を呑んで鎌鼬たちが仕掛けてくるのを待ち構える――が、様子のおかしい事に気が付いた。
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