月は紅、空は紫
「止める……?」
清空はイシヅキの言葉に疑問を感じた。
そもそも、鎌鼬というのは三身一体――つまり三匹で行動するものだ。
実際に、桂川で鎌鼬とやり合った時には、兄であるイシヅキが横槍を入れてきている。
あの時に三匹目を見ることは無かったが――その兄弟であるメジロを止めるとはいかなることか、清空にはイシヅキの言葉の真意を測りかねた。
「はい……我が弟、メジロは暴走しております。その暴走を……私には止められないのです」
鋭い眼を、一層鋭くしてイシヅキは清空に事の重大さを伝えようとする。
しかし、事情がよく飲み込めない清空としては即答は出来ない。
清空の使命とは、人に害を成す妖が居ればそれと戦い、退けることである。
『仁左衛門殺し』にせよ、新たに発見された遺体にせよ、メジロがそれらを殺害してしまったというのであれば、このイシヅキに頼まれるまでもなく清空はメジロを斃さねばならない。
だが、清空にはどうしてもイシヅキの言っている事が解せなかった。
「しかし、鎌鼬は三身一体――兄弟は離れることの適わぬ存在のはず。その仲間を……人間である私に斃せということなのか?」
思ったままの疑問を、清空はイシヅキにぶつけた。
イシヅキはその言葉に、清空から顔を背け、僅かに狼狽の様子を見せたのだがすぐに思い直したように清空に事情を話し出した。
「今は……兄弟は居ないのです」
振り絞るように出された、イシヅキの小さな声は清空にハッキリと聞こえた。
しかし、その言葉の意味を理解するには、イシヅキの次の言葉を待たなければならなかった。
清空はイシヅキの言葉に疑問を感じた。
そもそも、鎌鼬というのは三身一体――つまり三匹で行動するものだ。
実際に、桂川で鎌鼬とやり合った時には、兄であるイシヅキが横槍を入れてきている。
あの時に三匹目を見ることは無かったが――その兄弟であるメジロを止めるとはいかなることか、清空にはイシヅキの言葉の真意を測りかねた。
「はい……我が弟、メジロは暴走しております。その暴走を……私には止められないのです」
鋭い眼を、一層鋭くしてイシヅキは清空に事の重大さを伝えようとする。
しかし、事情がよく飲み込めない清空としては即答は出来ない。
清空の使命とは、人に害を成す妖が居ればそれと戦い、退けることである。
『仁左衛門殺し』にせよ、新たに発見された遺体にせよ、メジロがそれらを殺害してしまったというのであれば、このイシヅキに頼まれるまでもなく清空はメジロを斃さねばならない。
だが、清空にはどうしてもイシヅキの言っている事が解せなかった。
「しかし、鎌鼬は三身一体――兄弟は離れることの適わぬ存在のはず。その仲間を……人間である私に斃せということなのか?」
思ったままの疑問を、清空はイシヅキにぶつけた。
イシヅキはその言葉に、清空から顔を背け、僅かに狼狽の様子を見せたのだがすぐに思い直したように清空に事情を話し出した。
「今は……兄弟は居ないのです」
振り絞るように出された、イシヅキの小さな声は清空にハッキリと聞こえた。
しかし、その言葉の意味を理解するには、イシヅキの次の言葉を待たなければならなかった。