月は紅、空は紫
「半月前の紅い月の夜でした。我々兄弟は、逸る気持ちを抑えきれずに三人で桂川へと向かったのです。『三人で行動すれば、人を殺めてしまうこともない』と。私が人間を転ばしてしまえば、メジロの鎌は相手の急所を間違って切ってしまうこともありません。それに妹の――『クスノキ』の持つ薬があれば、すぐに切られた血も収まります」
『クスノキ』というのが、この鎌鼬の兄弟の最後の一人の名前か――清空は考えた。
この清空に出来た手の甲の傷、斬られた当初に比べれば出血も収まってはきているのだが、鎌鼬の鎌で付けられた傷だからであろうか、完全には出血は収まってはくれず、朝に包帯を巻き直してみても夕方には血が滲んでしまうような有様である。
鎌鼬の薬を分けてもらえれば、清空の手の傷も治るのではないか、と。
「そうだ、もし出来るのならば――その薬、私にも分けてもらえないだろうか?」
話の腰を折ってしまうような気もしたのだが、清空は思い立ったが吉日とばかりに薬の事をイシヅキに切り出した。
メジロを止めるという事に協力するにせよ、この手の傷を治しておいた方が良いには違いない。ならば、いずれは鎌鼬の薬を貰う事になるだろうし、順番が前後するだけだ――そんな風に清空は考えた。
だが、清空の申し出に、イシヅキは小さく首を横に振った。
「それが――クスノキの居る場所も……私は知らないのです。話す順番が前後してしまいましたが、弟が……メジロが暴走を始めたことも、クスノキが居なくなってしまった事が原因なのです」
イシヅキの話は、ようやく核心の部分に近付いていた――。
『クスノキ』というのが、この鎌鼬の兄弟の最後の一人の名前か――清空は考えた。
この清空に出来た手の甲の傷、斬られた当初に比べれば出血も収まってはきているのだが、鎌鼬の鎌で付けられた傷だからであろうか、完全には出血は収まってはくれず、朝に包帯を巻き直してみても夕方には血が滲んでしまうような有様である。
鎌鼬の薬を分けてもらえれば、清空の手の傷も治るのではないか、と。
「そうだ、もし出来るのならば――その薬、私にも分けてもらえないだろうか?」
話の腰を折ってしまうような気もしたのだが、清空は思い立ったが吉日とばかりに薬の事をイシヅキに切り出した。
メジロを止めるという事に協力するにせよ、この手の傷を治しておいた方が良いには違いない。ならば、いずれは鎌鼬の薬を貰う事になるだろうし、順番が前後するだけだ――そんな風に清空は考えた。
だが、清空の申し出に、イシヅキは小さく首を横に振った。
「それが――クスノキの居る場所も……私は知らないのです。話す順番が前後してしまいましたが、弟が……メジロが暴走を始めたことも、クスノキが居なくなってしまった事が原因なのです」
イシヅキの話は、ようやく核心の部分に近付いていた――。