月は紅、空は紫
勢い良く引き開けられた扉は、手入れがなされていない引き戸は悲鳴のような音を立てながら家の中と外界を隔てる役割を中断した。
少し淀んでいた『空診療所』に流れる空気が、戸が開いたことで入れ替わる。
その入れ替わった空気の中に、走ってやって来た訪問者が連れてきた砂埃が多量に混じっており――その砂埃に鼻腔をくすぐられ、眠っていた若者は無防備にくしゃみを一つ出した。
「清さん! 大変だよ! 早く起きて!!」
訪問者は、まだ前髪も残るような少女である。
少女は、眠っている若者に大きな声で呼びかけた。
だが、『清さん』と呼ばれた若者は、それでも眠りを終わらせない。
何せ、至極幸せな夢を見ているのだ、生半可な事では終わらせるつもりは無い。
そんな若者の様子に、玄関先から呼び掛けていた少女は焦れて居間に上がり込んだ。
布団の傍らにしゃがみ、若者の身体を揺すりながら声を掛ける。
身体を揺すられる刺激に、若者の意識は半覚醒状態になってはいるものの、それでも夢の魅力には抗し難いようで――若者はしぶとく眠り続ける。
少し淀んでいた『空診療所』に流れる空気が、戸が開いたことで入れ替わる。
その入れ替わった空気の中に、走ってやって来た訪問者が連れてきた砂埃が多量に混じっており――その砂埃に鼻腔をくすぐられ、眠っていた若者は無防備にくしゃみを一つ出した。
「清さん! 大変だよ! 早く起きて!!」
訪問者は、まだ前髪も残るような少女である。
少女は、眠っている若者に大きな声で呼びかけた。
だが、『清さん』と呼ばれた若者は、それでも眠りを終わらせない。
何せ、至極幸せな夢を見ているのだ、生半可な事では終わらせるつもりは無い。
そんな若者の様子に、玄関先から呼び掛けていた少女は焦れて居間に上がり込んだ。
布団の傍らにしゃがみ、若者の身体を揺すりながら声を掛ける。
身体を揺すられる刺激に、若者の意識は半覚醒状態になってはいるものの、それでも夢の魅力には抗し難いようで――若者はしぶとく眠り続ける。