月は紅、空は紫
 江戸時代の警察業務を果たしていたのは、幕府のある江戸では有名な奉行所である。
 北町奉行と南町奉行が設置されており、一ヵ月ごとに交代で江戸の治安を護っている。
 『大岡裁き』で知られる、大岡越前こと大岡忠相もこの時代において、江戸の南町奉行所にて勤めていた。
 名裁きや、大岡政談などの写本や講談によって庶民の間に『名奉行』として人気を博し、様々な活躍は後世まで知られることになった歴史上の有名人である。

 さて、京にも同じく治安を護るための奉行所が設置されていた。
 江戸幕府が京都に設置した遠国奉行の一つであるが、江戸の南北奉行所と違うのは、幕府が直接管轄していない、老中支配であるという事。
 また、任地の関係により直接指示をしていたのは老中ではなく京都所司代であった事である。

 現場で働く者にとっては、トップが誰であるということはさしたる問題でもなく、武士の仕事として東西に置かれた奉行所の人間たちは月交代によって京の平和と治安を維持させていた。
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