月は紅、空は紫
腕の良い医者の下には、多くの患者が集まる。
これはどの時代も変わらない。
特にこの時代では、医者にかかる際に払う金の相場は安定していた。
例えば、薬を貰うのに銀が二分である。
一分が一両の四分の一で、一両が現在の金に換算すると凡そ十万の価値があったとされる。
となれば、治療に必要な薬を貰うのに必要な金額はおよそ五万円となる。
庶民にとっては、おいそれと医者に通うわけにもいかず、ましてや高額の治療費を出さねばならないのに薮医者の元に通うなどとはとてもではないが考えられるものではない。
大方の庶民は、この時代では医者とは見做されていない揉み屋や、灸を打って身体の異常を誤魔化したり、市中の薬売りから安い薬を買って症状を緩和させるに留まっていた。
ただ、この時代にはあまりに高額な医療費に苦しむ庶民より、目安箱に救済を求める訴状が届いたりの事情もあって、江戸には『小石川療養所』なるものも設立されたりもしている。
幕府の直営にて運営された、れっきとした医療所であり、どんな庶民でも医療を受けれるようにと診療、薬の全てが無料で受けられる診療所である。
ただ、誰しもが小石川診療所に通えるような場所に住んでいるはずもない。
庶民にとっては、まっとうな医療を受けるというのは、病気がどうしようもなくなった時に、という『最後の手段』だったのである。
これはどの時代も変わらない。
特にこの時代では、医者にかかる際に払う金の相場は安定していた。
例えば、薬を貰うのに銀が二分である。
一分が一両の四分の一で、一両が現在の金に換算すると凡そ十万の価値があったとされる。
となれば、治療に必要な薬を貰うのに必要な金額はおよそ五万円となる。
庶民にとっては、おいそれと医者に通うわけにもいかず、ましてや高額の治療費を出さねばならないのに薮医者の元に通うなどとはとてもではないが考えられるものではない。
大方の庶民は、この時代では医者とは見做されていない揉み屋や、灸を打って身体の異常を誤魔化したり、市中の薬売りから安い薬を買って症状を緩和させるに留まっていた。
ただ、この時代にはあまりに高額な医療費に苦しむ庶民より、目安箱に救済を求める訴状が届いたりの事情もあって、江戸には『小石川療養所』なるものも設立されたりもしている。
幕府の直営にて運営された、れっきとした医療所であり、どんな庶民でも医療を受けれるようにと診療、薬の全てが無料で受けられる診療所である。
ただ、誰しもが小石川診療所に通えるような場所に住んでいるはずもない。
庶民にとっては、まっとうな医療を受けるというのは、病気がどうしようもなくなった時に、という『最後の手段』だったのである。