素直になれない


「好きにすれば?」

「言われなくてもそうする!」

「勝手にしろ。」


そう言って彼の家を出た。

最近こんな感じばっかり。

彼が忙しいのも分かってる。
だけど、やっぱり寂しい。

こんなことをしてもお互いに
プラスになってないことも分かってる。

「また、やっちゃった。」

蒼也の家の最寄駅から電車に乗り、
しばらくすると、わたしの家の最寄駅。
駅からトボトボと家までの道を歩く。


「おーい、紫(ゆかり)!」

声がして振り向くと
そこにはクロスバイクに乗る
松岡 理玖(まつおか りく)
同い年の幼馴染、生まれてからずっと、
もう26年も一緒。
ちなみに実家はお向かいさん。

「…なんだ。理玖か。」

…蒼也かと思った。
黒瀬 蒼也(くろせ そうや)
わたし、本田紫(ほんだ ゆかり)の彼氏。
淡い期待は砕け散った。
追いかけてくるわけないか、、、。

「失礼なやつだな。」
クロスバイクを降りて
わたしの隣を押して歩く。

「何その顔。暗い。また揉めたんか?」

理玖にはすぐバレる。

「…今回は本当にもう無理かも。」

きっとわたしのことなんて呆れてる。

「珍しいな、お前の弱音。
今回は何?」

最近まで就職で他県に行っていた理玖も
今月こっちに帰ってきた。
今は新しい家を探すまで
実家から通っている。

昔から兄妹の様に育ってきたわたし達は
隠し事も出来ないほど
お互いのことはよく知ってる。

「飲みに行く?
今から里佳と飯食うんだけど。」

理玖は一見冷たいけれど面倒見がいい。
予定が入ってるにも関わらず
わたしのことも放っておかない。

ちなみに里佳とは理玖の彼女。
もう8年は付き合ってるはず。
二人はわたしの紹介で付き合った。

「里佳には会いたいけど
邪魔しちゃ悪いし、今日はいいよ。
ありがと。里佳にもよろしく。」

そう言って一人で帰路に着く。



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