素直になれない
そのまま今日は特別に病院に泊まる。
「蒼也、お休み。」
そう言って隣の簡易ベッドに横になる。
そっと蒼也の手を繋ぎながら。
朝、目を覚ますと
まだ蒼也は寝ていた。
「ごめん、蒼也。
一回仕事行くね。帰り寄るからね?」
そう言って手を離そうとすると
蒼也の指が動いて触れた。
「蒼也!?蒼也!!!」
呼び掛けるとうっすらと目を開いた。
「…」
ナースコールを押し
「蒼也!分かる!?」
と呼びかけた。
「…。」
蒼也の目がわたしを捉えた。
「蒼也ぁ…っ、ごめんね、ごめんね…!」
すぐに看護師さんが病室にやって来た。
「目を覚まされました!?
すぐ先生を呼びますね!」
「お願いします…!」
しばらくすると先生が来て
診察が始まった。
その間に蒼也のお母さんに電話をした。
「…ほんと!?
よかった、…ほんとに、
紫さん、そばにいてくれてありがとう。」
電話口で泣く蒼也のお母さんに
わたしまで泣いてしまった。
「…すみません、あの。」
振り向くとそこには看護師さん。
「あ、はい。」
話を聞くと、
このまま本人の体調を第一に、
精密検査をすると言う。
わたしはと言うと、
蒼也が目を覚ましたことに少しの安堵と、
この後の検査の不安を抱きながらも、
一度仕事に行くことにした。