素直になれない



「また泣いてんの?枯れんじゃね?」

何て言いながらも
蒼也の目はすごく優しい。


「蒼也、ほんとに、すごい好き。」

「紫、」
「蒼、也」


お互いに見つめ合い、自然と近付く。




「あ、ちょっと、ストップ。」


もうすぐで唇が触れ合うって時に
掌でキスを拒まれた。

え?

「あのさ、」

「ん?何?」

「あのー、」
珍しい。すごく言いづらそうで
中々言葉が出てこない。


「蒼也?」




「紫が腕組んで歩いてた奴誰?」


ん?誰それ?いつ?
本当に思い浮かばなくて
考え込んでいると、


「昨日の夜。
他の男と腕組んで歩いてた。
紫が浮気とか思ってねーけど
俺の誕生日に連絡はないくせに
他の奴と会ってんのかよって思ったら
普通に苛ついた。」

「ごめん。
理玖だそれ。幼馴染。」

「それでお前の家の近くにいたんだけど、
一旦俺の家帰ろうとしたんだ。」

「出張なのに、
来ようとしてくれてありがと。
それなのに、ごめんなさい。
たまたま理玖に会って、
蒼也のことで落ち込みすぎてたわたしを
見かねて飲みに連れて行ってくれたの。」

「そー。」

「わたしね、
蒼也にああしてほしいこうしてほしいって
言うくせに待ってばっかだった。
本当にごめんなさい。」


「俺も。悪かった。
何だかんだ言っても
お前は分かってくれるって、
俺だって勝手だよな。」

と言ってまたわたしを引き寄せた。

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