素直になれない
「もうどうしていいか分かんない。」
お酒も入って、話題は蒼也のこと。
「アホか。簡単だろ。
ごめんね。って紫から
電話すればいい話だろ?」
「…だけど、、」
「てか、なんで紫は受け身になってんの?
被害者ぶってるんじゃねーよ。
その彼氏だって
はじめは予定空けててくれたんだろ?
急に出張って只事じゃねーじゃん。
仕事でどうしてもだろ?
きっと向こうだって嫌だったと思うぞ。
自分の誕生日に、
しかも彼女と予定もあったのに。
その気持ちも分かってやれよ。」
「…」
「紫も仕方ないって分かってんだろ。
いつまでも意地張ってたらずるずる長引いて
タイミングなくすぞ?
そんな一人で悩んでないで
会いたい時に会うんだよ。
二人でしか解決出来ないだろ?」
理玖の言う通り。
「なんか、理玖、恋愛評論家みたい。」
「人が真面目に考えてやってんのに。」
「そうよ、紫ちゃん。
いつも一緒にいるとね、
腹立ったり、一人になりたくなっちゃうけど
その倍、一人って寂しくて、
会いたくなっちゃうでしょ?」
「ごめんね、って甘えたら
彼氏もイチコロだよ。きっと。」
マスターがアテを持って
会話に入ってきた。
「イチコロって…。」
そう言いながらも自然と笑っている。
そうだよ。
喧嘩したからって一人でモヤモヤしてても
蒼也がいなきゃ意味ない。
謝ろう、ごめんね。って。
そして会いたいって言おう。
そう決断してお酒をぐいっと飲み干した。
「みんな、ありがとう。
わたし、ちゃんと蒼也と話する。」
「それがいいよ。」
「そうしな、そうしな。」
「ほんと面倒くさいな、お前。」