水月夜
千尋の顔が視界に映ったと同時に、勢いよくその顔を覗き込んだ。


普段の元気な笑顔とはほど遠い、げっそりした真っ青な顔。


私同様、目には真っ黒なクマができている。


学級委員の千尋がこんなやつれた顔で来るのはめずらしい。


「千尋……!」


「あぁ……梨沙、おはよう……」


口角を上げてなんとか笑顔を見せようとする千尋だが、その表情に胸が痛くなる。


無理して笑顔を見せなくてもいいのに。


泣きそうになるのをこらえて、千尋の席まで一緒に歩いていく。


そして席に着いて椅子に座るなり、千尋はぼんやりした顔でこちらを見てきた。


いきなり視線を向けられたことにびっくりして思わず一歩あとずさってしまう。


「な、なに……?」


おそるおそる話しかけると、千尋がポツリとひとりごとのようにつぶやいた。


「昨日の夜から弥生につながらない……」


つながらない?


それってもしかして……!


机を勢いよく叩き、千尋に顔を近づけた。


バンッ‼︎
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