水月夜
私が机を思いっきり叩いた瞬間、すでに教室にいたクラスメイトたちが驚いた顔を私に向けた。


しかしそんなことはおかまいなしに、ぼんやりしたままの千尋に問いかける。


「豊洲さんが行方不明ってこと⁉︎」


机を叩いた手の力とは裏腹に、小さくてしぼんだ感じの声。


行動と言葉が矛盾しているかもしれないが、クラスメイトたちの混乱を招かないためだ。仕方ない。


行方不明だと聞こえたときのクラスメイトたちの反応はだいたい想像できる。


ただ、豊洲さんをいじめていた直美とヒロエと紀子はどんな反応をするかわからない。


3人はどう思うだろうか。


チラッと直美たち3人に目をやる。


私よりも先に来ていた直美たちは、廊下側の席で楽しそうに話している。


まるで豊洲さんの存在を忘れているかのように感じられる。


胸がキュッと痛くなったとき、ガラッと教室のドアが開き、担任の先生が現れた。


それと同時に、自分の席から離れていたクラスメイトたちが慌てて自分の席に戻り、その波にまぎれて私も席に座る。
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