水月夜
ひとりのクラスメイトが死んだっていうのに、どうして笑っていられるの?


自分がいじめてた相手がいなくなったから?


ほくそ笑んでいる直美を見てると、無意識にそんな気持ちになる。


グッと握り拳を作る私に、先生がいきなり豊洲さんの葬儀と明日の予定について話した。


「明日は豊洲の葬式だが、葬式にはクラス代表で男女ひとりずつ、2年生の先生たちが参列することになる。なので明日は2限まで自習になる」


そうか。


明日の1限と2限はそれぞれ現代文と古典。


現代文と古典の授業を受け持っている担当の先生は、私たち2年生の先生だ。


担任の先生が言ったとおり、現代文と古典の授業担当の先生も葬儀に参列するなら、授業ができなくて当然だろう。


なんて考えているうちに、担任の先生が暗い表情をパッと消してホームルームをはじめた。


先生の表情の切りかえに驚きつつも、先生の話を頬杖つきながら聞きはじめる。


しかし、いまだに目をパチパチとしばたたかせている千尋とクスクス笑っている直美の姿がどうしても気になって、話の内容が両耳をすり抜けていった。
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