水月夜
クラス代表として私が葬儀に参列するのは、これ以上苦しめたくないという思いがあるから。


「本気です。本気じゃなかったら、葬儀に参列するなんて言いません」


睨むようなキリッとした目つきを先生に見せると、先生は気まずそうに私から視線をそらし、小さなメモ用紙になにか書きはじめた。


そしてメモ用紙に私の名前が書かれたのを見たタイミングで先生がうなり声をあげた。


「そ、そうか。女子のクラス代表が柏木になるということは、残りは男子だな」


男子のクラス代表か。


千尋と同じ学級委員の男子がいるけど、その男子は『クラス代表は自分が』という意見を出すようなタイプではない。


となると、学級委員の男子以外の誰かになる。


考えるポーズをしたとき、千尋が私と先生の間に無理やり割り込んできた。


「せ、先生、女子のクラス代表は梨沙じゃなくて私にしてください!」


「えっ、千尋⁉︎」


驚いて千尋のほうを見ると、千尋は額やこめかみに大粒の汗を浮かべながら手をあげていた。


顔はうしろからではわからないけど、たぶん焦っていると思う。
< 107 / 425 >

この作品をシェア

pagetop