水月夜
信じられないけど、今の顔色を見たら嘘ではないと思わせてしまう。


「“また”……?」


「そう。『水月夜』って暗い色しか使ってない不気味な絵じゃん? なのに今朝見た絵は全然違ってた」


その言葉に背筋が寒くなった。


なんだか嫌な予感がする。


「……っ、ど、どんな絵だったの?」


「なんて言えばいいかな。茶色い背景に、血まみれになった女の子だったような……。緑も見えたけど、あまりにも暗い緑だったから目立たなかったな」


描かれたという絵のイメージを想像したあと、目を見開いた。


茶色い背景に、血まみれの女の子⁉︎


それって、もしかして……。


「絵に描かれた女の子って豊洲さんじゃない?」


今度は千尋が目を見開く番だった。


でも、千尋が驚いたのはほんの一瞬だけ。


「そ、そんなわけないじゃん。今朝見た絵と弥生の死は関係ないでしょ」


必死に私の言葉を否定する千尋だが、動揺しているのか声に震えが見られた。


そんな千尋に、言葉を返した。
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