水月夜
「だって、先生は豊洲さんが山奥で死んだって言ったでしょ? 知らされる前に千尋が見た絵が山の中で血まみれになって死んだ豊洲さんだとしたら、納得できるよ」


「でも……」


「それに私、見たんだよね。豊洲さんが直美にいじめられた日の朝に、教室らしい場所でひとりの女子が3人の女子に蹴られてる絵を」


「嘘……⁉︎」


視線をバッとあげてさらに目を見開く千尋。


まだ信じたくないという表情をしているが、私がまったく違う絵を見たと話したところで千尋の表情は少し変化していた。


「じゃあ、私が今朝見た絵が弥生の死を表しているなら、梨沙が見た絵は……」


「うん。たぶん豊洲さんが直美とヒロエと紀子に教室で蹴られてることを表していたんだと思う」


首を上下に振って震える千尋の言葉を肯定する。


私が見た絵。


それはただの絵ではなく、直前に起こる出来事を映した予知夢のようなものではないか。


不気味な印象を受けた絵が変わってたとき、幻かリアルな夢を見たと思っていた。


しかし、絵のとおりに豊洲さんがいじめられた光景をまのあたりにしたら、幻ではないと思ってしまったのだ。
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