水月夜
普段の『水月夜』とは違う絵は幻ではなく、これから現実で起こると知らせるものなんだ。


いきなり絵が変わるなんてありえないでしょ?


絵が突然変わるのが科学的に考えられないことだとすれば、予知夢のような役割をはたしているとしか思えない。


というか、それしかない。


なんて考えていると、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。


次の授業は移動教室だ、急がないと。


目を見開く千尋を引っ張って階段を猛スピードで上り、教室へと向かう。


1分もたたないうちに教室にたどり着き、授業の準備をはじめた。


次の授業の準備はほんの数十秒で終わった。


ところが、千尋が教室に着いてもなかなか準備をしようとしない。


「千尋、授業に遅れちゃうよ! 早く!」


ぼんやりと遠くを見つめる彼女を急かす。


そして、すぐに我に返った千尋の準備が終わったタイミングで一緒に教室を出た。


その瞬間、うしろから突き刺さるような視線を感じた。


だが、それに気づかないフリをして、授業場所へと走っていったのだった。
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