水月夜
☆☆☆
教室から次々にクラスメイトが出ていき、さみしい空気に包まれた。
放課後になったこの時間、私はひとりでカバンに持ってきたものすべてを入れていた。
千尋は5限が終わったあとに担任の先生から体調不良を指摘されて早退したし、直美は緒方先輩を見にグラウンドに行っている。
残るヒロエと紀子は直美についていってるから、自然と私はひとりになる。
ひとりになることは今にはじまったことじゃないけど。
苦笑いを浮かべてそんなことを思ってるうちに机に入れていたものをすべてカバンに入れ終え、カバンを肩にかけた。
廊下に出て階段にさしかかったとき、突然ふっと目の前に人影が現れた。
当然誰のものかわからない影にびくっと怯えることしかできない。
いったい誰なの?
顔がどんどん青ざめていくのを感じながら、震える足であとずさりをする。
しかし、目の前に現れた人影はなぜかこちらに近づいてきた。
えっ、怖いよ!
だ、誰か助けて。