水月夜
心の中を支配していた恐怖がついに頂点に達して、私は思いっきり叫んだ。


「いやぁっ‼︎」


思ったより声が響き、内心びっくりした。


驚いてる自分をスルーしてギュッと目をつぶったそのとき、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「柏木、ど、どうした⁉︎」


あれ?


この声って、まさか……。


そっと目を開けて影の主に視線を向ける。


そこにいたのは雨宮くんだった。


「雨宮くん……」


知らない人かと思った。


ここに来たのが雨宮くんでよかった。


安心感に包まれたことで、足の力が抜けてその場にペタッと座り込んだ。


「うわっ! か、柏木、本当にどうした⁉︎」


「ごめん、雨宮くん。私、こっちに近づいてきた人影が雨宮くんだと思わなくて怯えちゃった……」


そう言いながら、床につけた手に力を入れて立ちあがった。


再び雨宮くんに視線を向けてははっと笑う。


だが、私の言葉を聞いた雨宮くんの表情が急に悲しそうなものになった。


ギョッと目を見開く。
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