水月夜
なんで私と雨宮くんがここにいることに気づかないの?


もしくは気づかないフリをしているの?


いずれにしろ、せめて私の存在には気づいてよ。


思いっきり叫びたいけど、直美がスマホで誰かと話しているので邪魔はできない。


なんとかして気づかせないと。


そう思った直後、雨宮くんに腕を引っ張られ、口を手で覆われる。


「バカ。俺と柏木がここにいるって大坪にバレたらどうするんだよ」


やや焦っている様子の雨宮くん。


言葉も若干震えていたから、動揺したのかも。


なんて思っていると、突然直美の声が隣から大きく響いてきた。


直美にバレないように雨宮くんと一緒に隣のほうに顔を覗かせる。


隣の空き教室に直美はいた。


楽しそうに笑いながら、窓のさんに腰かけている。


「あはは、なんでいつも以上に笑ってるかってー? だって最高の気分だもん」


最高の気分?


どうして自分でそう思うんだろう。


眉間にシワを寄せて首をかしげるしかない。
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