水月夜
心臓を鋭い刃物のようなもので勢いよくグサッと刺されたみたい。


だが、話はまだ終わらない。


「同じグループのやつらだけじゃなくて、他のクラスメイト全員ウザい。言いたいことを私の前では言わないし、私のこと避けようとするし。とくにウザいと思ったのはあいつだよ。前に私につかみかかろうとしたやつ」


前に直美につかみかかろうとした人?


それって豊洲さんのこと?


でも、豊洲さんは直美につかみかかろうとはしてないはずじゃ……。


「まぁ、そいつが死んでくれて助かった。そいつがいなくなったおかげで楽しく過ごせるし」


「…………」


「あいつ、山奥で死んでたって! あははっ、超傑作でしょ? 自業自得だっつーの!」


死んだのが傑作?


自業自得?


それらの言葉はすべて死んだ豊洲さんに向けられているのに、なぜか関係ない私が傷ついている。


どうしてかなんて、今は考えたくない。


「私の話聞いてくれてありがとね! なにかあったらまた連絡するからねー」


その言葉が聞こえた直後に声がピタッとやみ、足音が遠ざかっていった。
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