水月夜
「信じられない! クラスに不満を持つならまだしも、同じグループの梨沙たちの悪口を言うなんて! いったいどういう神経してるの、大坪さんは!」


どういう神経をしてるのか。


それは10年一緒にいる親友の私でもわからない。


本心を聞こうとすればするほどわけがわからなくなりそうだ。


ギュッと口をつぐんだ直後、私と千尋の会話をそばから聞いていたらしい雨宮くんがやってきた。


「大坪、どうかしてるよな。豊洲のことは自業自得、柏木のことはKYでクラスでの好感度を上げようとしてるって。いったいどれだけ悪口を言えば気が済むんだろうな」


「えっ、あ、雨宮くん……⁉︎」


そばで会話を聞いていたことに気づき、目を見開く千尋。


「雨宮くん、今の会話聞いてたの⁉︎」


「あぁ、悪い。盗み聞きするつもりはなかったけど、昨日大坪が悪口言ってたのを柏木と一緒に聞いたから落ち着かなくてな」


「梨沙だけじゃなくて雨宮くんまで聞いたの⁉︎」


だんだん千尋の声のボリュームが大きくなった。


そのことに気づいた私は、慌てて人さし指を口に当てた。
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