水月夜
連絡先を交換したと聞いた日、私は両想いになれるように頑張ってと直美をはげました。


そのときの直美の顔は本当に嬉しそうだった。


でも、直美の恋は一方通行だった。


このままでは直美は、女子から高い人気を集めてる緒方先輩とは永遠に結ばれない。


どうすればいいの。


グッと握り拳を作りながらギュッと下唇を噛みしめていると、緒方先輩が眉をハの字にした。


「ごめんね、柏木ちゃん。こんなこと言って。聞きたくなかったよね」


どうすればいいと考えているところは違う。


でも、聞きたくなかったというところは間違いではない。


親友がすでに失恋していると知り、聞かなきゃよかったと思ってるもん。


直美が緒方先輩に失恋したと先輩に言われる前に知っていれば、後悔することはなかった。


拳にさらに力が入り、爪が皮膚に食い込んで手のひらに痛みが走る。


その様子を見たらしい雨宮くんが私と目線を合わせるように少しかがんだ。


「……柏木、大坪のことで悔やむのはわかるけど、とりあえずは先輩の言うことを最後まで聞いたほうがいい」
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