水月夜

☆☆☆

緒方先輩からの話を聞いた翌日の朝。


さっそく雨宮くんから緒方先輩の伝言を聞いた直美は、意外にもしょんぼりと落ち込んでいた。


びっくりだ。


すぐに機嫌を悪くする直美なら雨宮くんに逆ギレするんじゃないかとヒヤヒヤしたのに、予想外の反応を見せたから。


「梨沙、どうしたらいい? 大好きな先輩に距離を縮めないでほしいって思われたみたいでさ。私のこと嫌いなのかな?」


私の前の席に座って私の机にうつぶせで突っ伏した直美。


今はまだ朝のホームルーム前でヒロエと紀子が来ていないので、私を話の相手にしている。


直美が私のところにやってきたことにより、今朝も雨宮くんは私に近づこうとしない。


チラッと雨宮くんの姿を確認しつつ、直美に言葉を返す。


「どうだろう。緒方先輩がなんで距離を縮めないでほしいと思ってるのかはわからないけど、直美のことは嫌ってないと思うよ。私、緒方先輩の姿を何度も見るけど、後輩の子たちに気を遣ってるよ。先輩は優しいから、直美を嫌ってないんじゃないかな」
< 139 / 425 >

この作品をシェア

pagetop