水月夜
ふたりで女子更衣室を出て、更衣室の鍵を急いで職員室に返す。
そして教室に向かい、それぞれ自分のカバンを持って昇降口へと出ていった。
ローファーにはきかえながら、チラッとグラウンドのほうに目をやる。
グラウンドの一部分だけが異常ににぎやかで、たくさんの女子が黄色い歓声をあげている。
その女子たちの中に直美がいるのは一目瞭然。
直美たち女子の目的はもちろん緒方先輩。
先輩に異性として見ていないと言われて落ち込んでいた直美だったけど、私にはげまされたことですっかり元気を取り戻したようだ。
私のクラスでのポジションを揺るぎないものとするためには、直美の恋のキューピッドとなって成就させなければならない。
そのことに胸がキュッと痛くなる。
口をつぐんでグラウンドのほうを見ていると、立ち止まる私を不審に思ったらしい千尋がひょこっと顔を覗かせた。
「梨沙、どうしたの? 帰らないの?」
千尋の言葉ではっと我に返り、慌てて作り笑顔を見せる。
「ごめん! ちょっとボーッとしちゃった! さっ、早く帰ろ!」
不思議そうな顔をする千尋の背中を押して、早歩きで歩く。
その直後に鋭い視線を感じたことに、このときの私は気づかなかった。
そして教室に向かい、それぞれ自分のカバンを持って昇降口へと出ていった。
ローファーにはきかえながら、チラッとグラウンドのほうに目をやる。
グラウンドの一部分だけが異常ににぎやかで、たくさんの女子が黄色い歓声をあげている。
その女子たちの中に直美がいるのは一目瞭然。
直美たち女子の目的はもちろん緒方先輩。
先輩に異性として見ていないと言われて落ち込んでいた直美だったけど、私にはげまされたことですっかり元気を取り戻したようだ。
私のクラスでのポジションを揺るぎないものとするためには、直美の恋のキューピッドとなって成就させなければならない。
そのことに胸がキュッと痛くなる。
口をつぐんでグラウンドのほうを見ていると、立ち止まる私を不審に思ったらしい千尋がひょこっと顔を覗かせた。
「梨沙、どうしたの? 帰らないの?」
千尋の言葉ではっと我に返り、慌てて作り笑顔を見せる。
「ごめん! ちょっとボーッとしちゃった! さっ、早く帰ろ!」
不思議そうな顔をする千尋の背中を押して、早歩きで歩く。
その直後に鋭い視線を感じたことに、このときの私は気づかなかった。