水月夜
ボーッとしながら歩いていた私が悪いんだ。
急いで教室に入ってきた人はなにも悪くない。
ここはなにごともなかったかのように帰ろう。
軽くぶつかった人物に頭をさげて真横を通りすぎようとしたが、真横に行く前に手首を掴まれた。
「……待てよ、柏木」
どこか苦しげな低い声。
この声の主は聞いた直後にわかった。
「雨宮くん……?」
突然教室に入ってきて私とぶつかり、通りすぎようとした私の手首を掴んだのは雨宮くんだった。
「どうして雨宮くんがここに来たの?」
突然私の前に現れた理由がわからず、疑問を口にする。
ぶつかったことと手首を掴まれたことがあまりに突然すぎるから頭の中が真っ白になったというのもあるかもしれないけど。
首をかしげたあと、雨宮くんが目をそらして泣きそうな顔をした。
「柏木と大坪がケンカして、大坪が柏木を次のターゲットにするって話を天馬(てんま)から聞いたんだ。それで柏木が心配になって……」
急いで教室に入ってきた人はなにも悪くない。
ここはなにごともなかったかのように帰ろう。
軽くぶつかった人物に頭をさげて真横を通りすぎようとしたが、真横に行く前に手首を掴まれた。
「……待てよ、柏木」
どこか苦しげな低い声。
この声の主は聞いた直後にわかった。
「雨宮くん……?」
突然教室に入ってきて私とぶつかり、通りすぎようとした私の手首を掴んだのは雨宮くんだった。
「どうして雨宮くんがここに来たの?」
突然私の前に現れた理由がわからず、疑問を口にする。
ぶつかったことと手首を掴まれたことがあまりに突然すぎるから頭の中が真っ白になったというのもあるかもしれないけど。
首をかしげたあと、雨宮くんが目をそらして泣きそうな顔をした。
「柏木と大坪がケンカして、大坪が柏木を次のターゲットにするって話を天馬(てんま)から聞いたんだ。それで柏木が心配になって……」