水月夜
千尋が直美に体育館倉庫に呼ばれた昨日の昼休み、私の席にやってきた雨宮くんは『泣きそうになる』と言っていた。


それを聞いた私が『どうして泣く必要があるの』と聞き、さらに『私のこと、ただのクラスメイトとしか思ってないんじゃないの』とも聞いた。


質問したとき、雨宮くんはなにも答えなかった。


それ以降、雨宮くんは直美がいるいない関係なく私の席に来なくなった。


そして今の時間まで私に近づかなかったのは、私への返事を考えていたためなのかと推測した。


「えっ……?」


まばたきをして、雨宮くんの顔をまじまじと見つめる。


そんな私に、雨宮くんが真剣な表情を見せて両肩を掴んだ。


「柏木のことは、ただのクラスメイトだなんて思ってない」


ただのクラスメイトだとは思ってない?


じゃあ、朝挨拶してくれたのは同じクラスの女子だからというわけじゃないの?


雨宮くんの答えにまた涙が出てくる。


結論は、ただのクラスメイトとは思っていない。
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