水月夜
ふん、と鼻を鳴らしてドヤ顔を見せる紀子。


『悪いことをしたらいつか自分に悪いことが絶対返ってくる』


そう言いたいのだろう。


考えるポーズをしながら心の中でつぶやいていると、ヒロエがさらに顔を近づけてきた。


「今思ったんだけどさ……直美に放課後仕返ししてやらない? 今までやってきた自分の行動がすべて悪かったんだって謝らせるの」


紀子に負けないくらい不敵な笑みを浮かべている。


直美に仕返しする、か。


その提案はヒロエにしてみればいいかもしれないけど、私は直美からしてみれば裏切り者に過ぎない。


裏切り者である私を見て直美が謝る姿を想像できない。


そっと視線をそらしてうつむく私をスルーして、紀子が首をかしげた。


「でもヒロエ、直美に逆らうにしてもなにか話題を持ってないと仕返しできなくない?」


そこだ。


仕返しにおいて最大の問題は、直美をトラウマにおちいらせる話題がないということだ。


もしなんの話題も持ってこずに直美に刃向かえば、ヒロエと紀子も直美のターゲットにされてしまう。
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