水月夜

他人に怒鳴りつける聖奈を見たことがない私はまばたきをするしかないが、ヒロエと紀子は不敵な笑みを浮かべた。


「やるじゃん、矢畑」


「本当は私たちが直美の頬を叩く予定だったけど、やらなくて済むかもね」


ヒロエと紀子の言葉を聞いても、私はまだまばたきをしていた。


と、そのとき、聖奈が私のほうに体を向けた。


「梨沙、あとは私たちにまかせて」


「えっ、まかせてって……」


いったいなにをするつもり？


疑問に思って首をかしげるが、ヒロエと紀子がこちらにやってきてコソッと耳打ちしてきた。


「直美の処理は私たちにまかせてよ」


「私たちで直美をうまく処分するから、梨沙は雨宮くんと一緒に帰りなよ」