水月夜
不安と嫉妬
久保さんから不気味な印象を受ける絵をもらった次の日。
この日は意外にも早く目が覚めた。
いつもは登校ギリギリまで寝ているのだが、なぜかパッと自然に目が覚めたのだ。
ベッドから降り、昨日もらった絵の近くまで歩み寄る。
もらった絵は昨日の夜、太陽の光が当たらない北側の壁に飾った。
朝起きて見てもやっぱり不気味な印象しかない。
これ、本当に『水月夜』っていうタイトルがついてるの?
この絵をくれた久保さんを疑ってるわけではないけど、この絵は普通の絵とは違う。
美術はあまり詳しくないからわからないけど、新鮮味がないというか。
ぼんやりとした目で壁に飾った絵を見つめていると、1階からお母さんの声がした。
「梨沙、朝ご飯できたよ!」
その声ではっと我に返り、急いで制服に着替えて身だしなみを整える。
寝る前に用意していたカバンを持って階段を下りていく。
リビングに顔を覗かせたと同時に、偶然こちらに顔を向けていたお母さんと視線がぶつかった。
「あら梨沙、今日はずいぶんと起きるの早いね」