水月夜
なんで殺すの⁉︎


心の中に芽生えた驚きをできるだけふたりに見せないようにしてたのに、表情に出たのか紀子にバレてしまった。


「り、梨沙、どうしたの⁉︎」


紀子の声でヒロエが目を見開いて私のほうを見た。


しかし、私はヒロエの視線と紀子の声に気づかないフリをして立ちあがった。


「梨沙、どこ行くの⁉︎」


「誰かに助けを求めてくる! ふたりはそこで待ってて!」


ヒロエの驚いた声に振り向くことなく走りだした。


『水月夜』の絵のとおりにさせないためには、誰かに直美を止めてもらわないと。


焦る気持ちをおさえて、私は走り続けた。
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